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コラム2014

【2014年コラム】
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『集団的自衛権 VOL.117』 1月のコラム

昨年暮れに安倍総理の靖国神社参拝と沖縄県知事が普天間基地を辺野古に移転するための埋め立て申請を承認という大きなニュースがあった。今年は福島の原発もニュースソースとして比重を占めるだろうが、今回は集団的自衛権について論じてみたい。

そもそも集団的自衛権とは何か。分かり易くいうと、日本とアメリカが一緒の行動をとるということ。日米安保条約はあるが、これは日本が攻撃を受ければ、アメリカが助けにくるというもの。しかし、アメリカがどこかの国から攻撃された場合、日本はアメリカを助けるため即刻出ることはできない。対アメリカでなくてもアフリカなどへの人道支援に自衛隊を派遣する場合でも、憲法に抵触しないか、銃器類の携帯はいいのかといったことでも国会が揉めることも過去にはあった。このような状態では、同盟国のアメリカが本気にならないのも無理からぬこと。

いかなる場合にも日米が共同で行動する。集団的自衛権を確立してこそ、日本の安全保障は万全となる。集団的自衛権が確立すると、日本は戦争に巻き込まれるという懸念を持っている人達の意見があるが、核兵器を搭載したミサイルが太平洋を飛び交う事態になれば、どの国にとっても有事になる。

例えば、尖閣諸島や南シナ海に端を発して紛争が起きたとしても、日米が共同行動を取るとなれば、中国は動けない。この種の紛争で物をいうのは航空母船だ。最近中国は海軍力の増強を図り、日本周辺を艦隊で就航させたり、ロシアから購入した航空母船を就航させたりして盛んに力を誇示している。だが、できるのは力の誇示くらいで、それ以上はできない。なぜなら、航空母艦を戦力として駆使するには、艦載機搭乗員の訓練と技術的に熟練を要するからである。

その点、日米は先の戦争で航空母艦を中心として機動部隊を編成し、これを自由に駆使する熟練した技術を備えている。ましてや現在、アメリカは航空母艦の最強国である。日本の海上自衛隊は航空母艦こそ保有していないが、それに匹敵する内容を備えている。中国は動けないのだ。

この集団的自衛権を確立して日本はどうするのか。それは何もすることはない。その状態を維持しているだけでいい。これで十分他国からの侵略に歯止めがかかっているのだから。安倍政権が次に取り組む課題のひとつが、この集団的自衛権確立のための法的整備である。
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『消費税前夜 VOL.118』 2月のコラム

安倍政権が誕生して一年余。回復基調の日本経済は、景気対策の第一の矢が功を泰して急速に円安が進み、企業の決算は大幅に改善された。日銀短観、GDP、雇用統計、株価の上昇と順調に景気回復が図られている。

一方、今年最大の難関は4月からの消費税の引き上げ。多くのシンクタンクは、増税による落ち込みは一時的と見ている。だが、景気動向に敏感な証券業界には「辰巳天井、午尻下がり」のジンクスがあり、どうなるかアベノミクスの真価が問われるところでもある。昨年12月の日銀短観によると、大企業製造業DI〔業況判断指数〕は、9月調査時に比較して4ポイント改善して+16、非製造業は6ポイント改善の+20.12月調査の特色は、改善の遅れていた中小企業に景気回復の恩恵が及ぶようになったことだろう。この結果、景気が「良い」とする中小企業が「悪い」とする中小企業、非製造業ともに上回った。製造業がプラスと転じたのは07年12月以来、非製造業はバブルが崩壊した1992円2月以来で約22年ぶり。中小企業庁の10月〜12月の「中小企業景況調査」でも、全産業のDIはマイナス幅が縮小した。また、全国中小企業団体中央会の11月「月次景況調査」によると、売上高、景況、収益状況はリーマンショック前の06年秋を上回っている。

11月のデパートの売り上げは、前年同月比2.4%増。美術、宝飾、貴金属の高額商品は、同21.0%増。スーパーの売り上げも4カ月連続して前年同月比を上回り、個人消費の回復が着実に進んでいる。政府の14年度の経済見通しは、名目3.3%、実質1.4%のプラス。金額ベースで500兆4千億円となり、GDPが500兆円を超えるのは07年以来となる。民間シンクタンクの予想はこれほど高くないが、いずれのシンクタンクもプラスの予想となっている。

この中で今年最大の不安定要因は、5%の消費税を8%に引き上げること。安倍内閣の中でも、「立ち直りつつある景気の腰を折る」との反対論も少なからずあったが、それでも引き上げに踏み切ったのは、海外へ「日本は財政再建」に取り組んでいるという姿勢を見せることができることと、景気対策によって乗り切れるとの判断があったためとされる。

午年のジンクス通り、株価は春から「尻下がり」と予測されるが、低迷は一時的で秋から再び上昇となるか。そして、中小企業で働く人達にまで給料は上がるのか。果たして今年の12月の日本経済はどうなっているのか。
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『特定秘密保護法 VOL.119』 3月のコラム

昨年12月6日、「特定秘密に関する法律(通称・特定秘密保護法)」が成立した。今回成立した特定秘密保護法では、外交や防衛などの国家の安全保障に関わる重要情報を漏洩した場合、これまで1年だった懲役を最高で10年にしている。野党やマスコミはこれを「厳罰化」と騒ぎ立てたが、諸外国で最高の刑が懲役10年などという生ぬるい国はどこにもないと言ってよい。

最高度の国家機密を敵国に漏洩した場合、平時であれば無期懲役、戦時なら死刑という国が多数なのだ。特に欧州諸国の中には、普通の犯罪について刑法では死刑がないにも拘わらず、国家機密漏洩罪に関しては死刑が適用される場合もある。それほど国家機密の漏洩とは重大な罪などだ。今までのような杜撰な情報管理を続けていけば、米国等同盟国や友好国は今後、日本には情報を伝えてくれない瀬戸際にあった。だからこそ日本でも国家機密を保護しようという目的から、ごく「ゆるい」ものであるが、基本的に普通の国家であれば当たり前の法律をつくろうとしたのだが、これに対し日本のマスコミが声高に反対を叫んだ。

そもそも国家の秘密に関する法律を持たない国は、先進国にはひとつもないと言っても過言ではない。今回の法律は世界の基準から見れば初歩の初歩。こんな立法で国の安全を守れるのか。特に米国の外交筋は「こんな程度か」と思っているのではないか。

本法案では特定秘密に指定された場合、5年毎に見直しされ、最長でも基本的には30年で指定解除され、国民に公開されることになっている。但し、内閣の承諾を得れば指定期間を通算60年までに延長することができる。これに関して「30年はながすぎる」「60年なんて永遠と同じだ」と議論が横行した。だが世界の常識からして、国家の最高機密情報を数十年単位で公開されるという方が、非常識なのである。最も情報公開に熱心だとされる米英は、百年経っても公開していない「特定秘密」が、山のようにある。

スパイを取り締まるという戦後日本で初めてのこの法律により、外国のスパイやテロリストを追いかけている警視庁や公安調査庁、防衛省の監視情報なども「特定秘密」にしてもよいと認められた。ようやく、スパイの取り締まり情報の漏洩を防ぐ手立てが生まれたのである。日本は世界に例のない「スパイ天国」と呼ばれ、日本に来ればどんな情報でも自由に取れると言われた。確かに「知る権利」も重要であるが、逆にそのために、どれだけ多くの国益が失われたことか。今回の法案であるが、逆にそのために、日本がスパイ天国でなくなったら困る人も大勢いたと思われる。メディアを鵜呑みにしてはいけない。
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『ドロシー・ロー・ノルトの詩 VOL.120』 4月のコラム

自分に正直になったとき、大事なことに気づく。

本気で何かをしているとき、大事なことに気づく。

捨ててもいいと思ったとき、大事なことに気づく。

変わってもいいと思ったとき、大事なことに気づく。

人に頼るのをやめたとき、大事なことに気づく。

思いがけないところで、大事なことに気づく。

じっと見つめたとき、大事なことに気づく。

じっと聞いたとき、大事なことに気づく。

新しい人に出会ったとき、大事なことに気づく。

人を責めるのをやめたとき、大事なことに気づく。

失敗し、失望したとき、大事なことに気づく。

違う道を選んだとき、大事なことに気づく。

自分に正直になったとき、大事なことに気づく。

本気で何かをしているとき、大事なことに気づく。

捨ててもいいと思ったとき、大事なことに気づく。

大事なことに気づくのは、難しいことではない。

いつも心を開いていたい。

いつも耳を澄ましていたい。

そうすれば、あなたは気づく、あなたは出会う、本当の自分に。
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『日本版NSC VOL.121』 5月のコラム

昨年末、「国家安全保障会議」を創設するための関連法が成立し、日本版 NSC(National Security Council)が発足した。今年1月には内閣官房にNSCの事務局である「国家安全保障局」が設置され、本格的に動き出した。

このNSCは米国のNSCを参考にしてつくられたので「日本版」といわれる。米国の NSC は 1947 年に発足した。それまでは国と国が対立し外交交渉に行き詰まると、軍に引き継いでいたが、これからは軍と外交が協力し合ってともに安全保障に対応すべきとして設置された。これをきっかけに多くの国が NSC をつくり、韓国でも 1963 年に設置された。

このたびの日本版 NSCの設置により我国でも首相、官房長官、外務大臣、防衛大臣の四者が常設化され、必要に応じて他の大臣や官僚、関係者が参加し安全保障上の意思決定がなされることになった。その運営事務局にあたる「安全保障局」には各省庁からスタッフが派遣され、同時に各省庁はNSCに対し情報提供が義務づけられた。

NSCの重要性は現実に即して考えると分かりやすい。例えば、仮に尖閣列島に中国軍の潜水艦が特殊部隊を乗せ侵入したとする。いま尖閣の最前列で警備しているのは海上保安庁であるが、これは国土交通省の管轄である。しかし潜水艦で特殊部隊進入となると、とても海上保安庁では手に負えず、自衛隊が出動することになる。そうすると今度は防衛庁の管轄になり、その移行が迅速に行われなくてはならない。同時に中国政府に抗議しながら、同盟国である米国と安保条約の発動を協議するのは外務省である。

2010年9月に尖閣付近で中国の漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしたが、この後中国がレアアースの貿易規制をかけたことは記憶に新しい。貿易を安全保障の手段として使ってきたのである。こうなると、今度は経済産業省も関わってくる。また、サイバー攻撃を仕掛けられた場合、自衛隊がターゲットなら防衛省のサイバー防護部隊が対応し、それ以外が対象なら警察庁や総務省が関係してくる。

こうして考えると有事の際、国交省、防衛省、外務省、経産省、警察などが一元的に対応していかなければならないことが明白である。これまでのように縦割り行政では、これからの安全保障は乗り切れないのである。日本版 NSC の一連の報道を見ていると、その重要性、必要性が伝わっていないのではないかと思わずにはいられない。
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『ポスドク・STAP細胞 VOL.122』 6月のコラム

ポスドクとは、ポスト・ドクター。博士号をとった後の生き方のことである。博士号(ドクター・Dr)をとることは並大抵ではない。大学を卒業した後、修士(2年)課程に入り、修士を終えた後に博士課程(通常3年)に進む。理系の学生は修士を出てから就職するケースが珍しくない。博士号を取得すると年齢は、27、28歳ぐらいになってしまう。それから就職するとなると、年齢制限や企業側が採用しにくいということになり、就職口は狭くなる。博士課程後の就職先は、大学に残って教授への道を目指すか、企業の研究部門で研究者になるか、というのがわずかに残された道なのだ。

もちろん博士課程を出たからといって、そのまま教授への道や研究者のポストが待っているわけではない。大学では一つの講座に一人の教授ポストしかないため、それ以前に助教授、助手などのポストに入り込めないと就職口を見失う。大きな大学、有名な大学は、うまくいけば系列の大学に推薦してもらい、そこで業績を上げると出身大学に戻してもらうこともできるが、その数は限られているので、「博士課程は出たけれど」という、ポスドク問題に突き当たる。ポスドクは1万人以上いると推測される。

STAP細胞で一躍、時の人となり、その後窮地に追い込まれた小保方晴子さんは、早稲田の博士課程を出た後、ハーバードや理化学研究所などいくつかの研究所を渡り歩いた。それこそ非正規社員のような身分で実験、研究に明け暮れながら業績を上げることに懸命なポスドク生活を送ってきたと思われる。だからSTAP細胞の存在が認められれば、理研や各大学から世紀の研究者、准教授、教授として迎えられただろう。

今回の小保方さんへの批判は論文の書き方や作法、データの取り方、保存の仕方など形式面が多く、理研の調査もSTAP細胞の存在そのものに切り込んでいない。難病で苦しんでいる人達はSTAP細胞に大いに期待し、一刻でも早くと新しい治療法を待っている。未熟だったとか、責任論ではなく、彼女が力強くことばにした「STAP細胞はあります」ということばを信じてみたい。あるというSTAP細胞を世の中に役立ててこそ、研究者の本望ではなかろうか。
今回の騒動は世間によくある見栄や外見や保身や羨望などといった本筋とは違う人間の本質を具間みたという感じがする。
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『生産人口減少 VOL.123』 7月のコラム

人手不足が景気の足を引っ張っている。建設・外食・運輸・サービス業などでは特に深刻でパートやアルバイトの争奪戦が起きている。時給をアップしても人は集まらず、中には存亡の危機に立っている企業もいる。

牛丼の「すき家」を展開するゼンショーホールディングスでは人手不足で2千店舗の内180店舗が閉店を余儀なくされているという。すき家の場合、人が集まらなくなった原因はワンオペレーションと呼ばれる労働が常態化しており、負担が大きいことが要因のようだ。深夜でも一人勤務が多く、レジの売り上げを狙った強盗事件が多発。平成23年に全国で起きた牛丼店を狙った未遂を含む全ての強盗事件の内、87%をすき家が占めていた。

建設業ではアベノミクスによる公共事業の増加や復興需要によって、トラック運転手の日給が倍近くに上昇。格安航空会社(LCC)ではパイロット不足が深刻で企業の信用まで落ちている。バニラ・エアは6月の運行の内約2割の154便を中止する。ピーチ・アビエーションも10月までに最大約2,000便を減便するという。原因はいずれもパイロット不足。  パイロットは牛丼のようにアルバイト募集というわけにはいかない。パイロット養成には約10年の歳月と億単位のコストがかかる。LCCは2010年に破綻したJALから機長を迎えたり、ヘッドハンティングなどにより人材を確保、路線の拡大に対応してきた。だが、路線の拡大に機長の数が追いつかず、今回の事態に至った。

70年台の高度成長期や90年台のバブルの時でも、公共事業の拡大から建設・土木業界では専門の職人が不足し、どの業界でも新卒者の確保が企業の大きな課題になった。しかし、過去の例と現在の人手不足とでは決定的な違いがある。かつては好景気を背景に高い報酬を支払う業種や企業に人が流れていたのだが、今回の場合は生産人口(15歳以上65歳未満)が大幅に減っていることが原因なのだ。  総務省のデータによると、2008年の生産人口は約8,230万人。対して2013年の推計では7,900万人と5年で330万人も減り、東京オリンピックが開催される2020年には7,300万人になると予測されている。今後、少子高齢化はますます進み、生産人口を支える若者は減る一方だ。年寄りが日本の経済を支える事態になることは間違いない。アルバイトで日々の糧を稼ぐ若者やニートを大量に生み出す状況の日本は、今後どこに向かうのだろうか。
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『幼稚な精神 VOL.124』 8月のコラム

いつの世も年配者は「今どきの若い者は」というが、今は年配者が常識人だとは思えない事象が多い。いい年齢の大人が幼い小学生の少女を連れ去り監禁したり、40代の警察官が違法な薬物に手を出したり、はたまた県民の代表である県議が政治活動費の不明な支出で会見で号泣する。精神が幼いまま体だけが成長した人間が多くなったと思わざるを得ない。

戦後のアメリカの占領政策により精神を骨抜きにされた日本人。資本主義の名の下、経済成長により裕福で便利な生活を 享受できる環境になり、誰もが教育を受ける権利を得、識字率はほぼ100%。紛争をしている国や貧しい国からみれば、夢の国に見えるだろう。しかしその実態はモラルの低下による社会腐敗、経済至上主義により売上げをあげる為には手段を選ばない利己主義、今が楽しければそれでよいという享楽的、堕落的な荒廃した心。病んでいる国、日本と言うのが実態である。

時計は後戻りできず、前に進むだけ。人間の欲望は限りがなく、留まることなく次々と新しい刺激を欲しがる。人類にとってよかれと思い考え出したことが、良い事ばかりとは限らず、逆に大きな禍になることも往々にしてある。歴史はそれを繰り返す。人を守ったり、幸福度を高めるための発明や発言は表裏一体の危険を孕んでいる。意図的に悪意を持って利用する輩が必ずいる。又、賢明な使い方をしても、自然の災害の前に人はなすすべがなかったりする。

これだけ普及したパソコンや携帯電話。便利だが、人を中傷して死においやったりするに至ってはなんともやり切れない。毎年、毎月、毎日、新しい刺激があり、もっと強く大きな刺激を求めているうちに、いつの間にか心を病んでしまっている人間社会。昭和の時代は長寿が尊ばれ、敬われたが、長寿者が多くなった現在はお荷物になりつつある。人間も自然の一部なのだから、寿命を全うすれば土に帰るという生き方は今の世は難しくなってしまったようだ。人工的に延命してもその人がこの世に生まれてきた意味を全うしたとはいえない。

この辺で我々はもう一度原点に返り、急ぐリスクに気づき、自分を見つめなおす時間を持つか、もしくは鍛錬して、急いでもやまない精神力を身に付けるか。どっちにしろ生きにくい世の中になっていくようだ。
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『人並み意識 VOL.125』 9月のコラム

就職のあり方研究会が、今年の新入社員を対象にした働くことの意識を調査した結果、人並みで十分だと考えている若者が52.5%で人並み以上に働きたいを上回った。この数値は過去最高だった1990年から91年ごろのバブル末期に「売り手市場」だったころの意識になってきているということで、興味深い数値といえる。生活できればしゃかりきになって働くことはないというのが現代っ子ということなのだろう。

バブル末期の新人たちは「新人類」と呼ばれ、当時の管理職世代からは何を考えているか分からないと言われたが、その新人類が管理職世代となり、現代の若者を評価する立場になった。同調査によると「今の会社でずっと働きたい」「定年まで働きたい」という回答は28.8%で「状況次第で変わる」の34.5%を2年続けて下回った。「定年まで働きたい」という若者が一昨年以降、年々減ってきているということは、学生にとってはとにかく企業から「内定」がもらえて安定した生活をしたいという思いが変化しているといえる。転職の意欲がみられることは、心の余裕が出てきているという見方もできるが、忍耐力が少ないという見方もできる。

また、「会社を選ぶとき、最も重視したのは何か」という設問では「自分の能力、個性が活かせるから」が31.4%で最多だったが、学生のレベルで自分の「個性」が活かせるかどうか判断できるのだろうか。22〜23歳でどの職業が自分に合っているかどうかなんてことは分かりっこない。仕事は自分に合っているかどうかではなく、仕事に自分が合わせ、努力することが社会人として成長していくということなのだが……。

「若い時の苦労は買ってでもしろ」とはよく言われることだが、すき好んで苦労する人などいない。思いもかけない環境の変化で望まないのに苦労せざるを得ない状況に陥ってしまい、結果、苦労して大を成すとういことになる。それに大変な思いをした人には竹の節のような、木の年輪のような、なんともいえない人間味がある人が多い。凛とした内に秘めた強さを感じる人は、人並み以上の経験をした人である。苦労はしたくないが、素敵な人間になりたいというのは相反する。

ただ、「デートの約束があったとき、残業を命じられたらどうするか」との設問は81.3%が「デートをやめて仕事をする」と答えている。プライベートよりも仕事を優先する傾向がうかがえた。自分の時間を犠牲にできるという精神があるということは日本社会にほんの少し「救い」があるといえそうだ。
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『朝日新聞の罪 VOL.126』 10月のコラム

相次ぐ厳しい批判についに耐え切れずといっていいだろう。朝日新聞が従軍慰安婦報道について誤りを認めた。大戦時日本軍が朝鮮の女性を無理やり拉致連行して、軍の慰安婦として働かせたという従軍慰安婦問題の根拠となっていたものは、旧日本兵の故吉田清治氏の証言である。吉田氏は自らが慰安婦狩りに関わったとしてそのことを著書「私の戦争犯罪」を通して告白した。

火付け役となった朝日新聞をはじめ、マスコミはこのことを大きく取り上げた。旧日本軍g慰安婦狩りを行い、従軍させていたとしたら取り返しのつかない戦争犯罪である。その後吉田氏の証言に基づいて、識者やマスコミによる綿密な調査が行われ、その結果、慰安婦狩りが行われたという事実は一件も確認されなかった。吉田証言は根も葉もない全くの作り話だったのだ。その中でいつまでも検証もせず誤りも認めなかった新聞が朝日新聞だった。吉田証言が嘘と明らかになったのは1990年代の初めだが、朝日新聞はその後も強制連行があったという前提での報道を続けた。

この朝日新聞の報道の結果、日韓関係に大きな亀裂が入り、在米朝鮮人や中国人たちの執拗なロビー活動によって、今や従軍慰安婦はホロコーストと並んで世界的な人権問題まで発展してしまった。今年8月になり、朝日新聞はようやくこれまでの誤りを認める報道をしたが、日本のダーティなイメージを植え付けた朝日新聞の罪は看過できるものではない。どれほどの国益が失われたか計り知れないし、又報道を信じた国民が自虐史観に囚われることとなり、日本人としての誇りをもてなくなったことは見えない大きな損失と言えよう。

新聞に限らずいわゆる朝日系列のマスコミは体制のやることなすこと否定的な報道に終始し、弱者救済とか弱者保護とか、正義の味方よろしく論法を繰り広げるが、中身が伴わず、現実味のない理想の空論を繰り広げている。マスコミの報道は影響が大きく、見聞きする側はその通りと思ってしまう。片側だけでなくその反対の見解も報道し、視聴者が選択できるようにすべきである。

反対することは易いこと。見るとやるとでは大違いなのである。国にせよ会社のような組織にせよチェック体制は必要だが、それはあくまで国や組織を第一に考えてのことでなければならない。自己を中心に置いた国や組織は長く続かないことは歴史が証明している。
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『法遠(ほうおん)去らず VOL.127』 11月のコラム

浮山法遠(ふさんほうおん)禅師(991〜1067)は葉県(せっけん)禅師の弟子である。葉県禅師はまさしく「厳冷枯淡」(げんれいこたん)、人情のかけらもないほど厳しい人で知られていた。その禅師のもとに、若い法遠は入門を乞うた。禅門では容易に入門は許さない。「庭詰」(にわづめ)と称して、玄関先で何日も頭を下げ続ける。厳しさで知られる葉県禅師のこと、幾日も入門を願うも許されない。雪の舞うある日、ようやく葉県禅師が現れるや、門前にいる僧たちに頭から水をぶっかけた。僧たちは皆去ってゆくが、法遠は「私は禅を求めてまいりました。一勺の水くらいでどうして去りましょうや」と留まって、入門を許される。

ある時、法遠が典座(てんぞ)という、料理の係りを務めた時のこと。葉県禅師が師の「枯淡」ぶりは想像を超えており、皆飢えに苦しんでいた。師の葉県禅師が出かけたことをよいことに、法遠は皆のために特別の「油麺」(ゆめん)をご馳走しようとした。ところが、ようやく馳走のできたまさにその時、葉県禅師が予定より早く帰ってきた。烈火の如く怒った禅師は「油麺」の代金を法遠に請求し、さらに30棒くらわせ、寺から追い出した。法遠の道友たちは師に許しを請うが聞き入れられず。せめて外から参禅でもと願うもこれも拒絶される。法遠はやむなく托鉢して「油麺」の代金を賄った。

さらに法遠が寺の敷地内に居住しているのを見つけると、家賃を納めよと迫る。容赦ない仕打ちだが、法遠はそれに応じひたすら托鉢する。ある日、葉県禅師が町に出ると、黙々と風雨に耐えて托鉢する法遠の姿を目にする。そこで法遠こそ真の参禅者だと感じ入り、寺に迎えて自らの後継者とした。

この話はひたすら耐え抜いた法遠の志を貴んで、「法遠去らず」という逸話として伝えられている。古来禅の修行は行雲流水などと言われ、自由に師を求めて行脚をした。それも大事であろう。しかし、どこにいてもその師や道場の欠点を気にしていたのではものにならない。禅宗の老師はよく理不尽なことを言いつけて修行僧を困らせるが、世の中を生きていくには道理に叶うことより理不尽なことが多い。「なぜこんな目に遭うのか」悲憤慷慨することがしばしば。そしてその人の真価が問われるのはそんな時。一言も発せず黙して忍事の貴さを知らねばならない。自然の災害なども然り。それでも人は耐えて生きていかねばならない。
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『総選挙 VOL.128』 12月のコラム

突然降って沸くとはこのようなことをいうのだろう。安倍総理が衆議院を解散、総選挙に打って出た。「何があったのか」「一体何のために今総選挙をするのか」という国民には大義が見えにくい選挙といわれる。消費税の一年先の先延ばし、アベノミクスの是非を問うと総理は公言しているが、別に選挙をしなくても、と思うのだが。

自民党の総裁の任期は三年。最長二期まで。総理はここで選挙で勝って、来年九月の総裁選で再選され、通期六年総理をして国政を坦うことを狙っているのではなかろうか。後四年、国政を引っ張るとなるとちょうど今が選挙のタイミングといえる。いつ何かあるか分からない政治の世界で、支持率が比較的高い「今」が勝負と賭けに出たともいえる。

選ぶ方の有権者は、民主政権で懲りているので野党は当てにできず、現状で選べといわれてもなぁ、というのが本音ではなかろうか。確かにこの二年は前政権よりマシだった。問題はいつでも山積しているが、安倍さんはよくやっていると思う。世界が狭くなって外交が重要な国益に直結する現代、多くの国を経済人と外遊して日本の顔をしてセールスをし、また中・韓にも媚びない外交姿勢を貫いている。

盟友の菅官房長官も精力的にしっかりと総理を支えている。メディアに登場するような評論家や報道関係者とも情報交換を日に2〜3回は毎日行っているという。サラブレッドの総理と苦労人の女房役。組織は外圧よりも内部から崩壊するものだが、今のところ自民党は総理のコントロール下にあるといってもよい。内輪揉めしているのは野党の方で、与党の政策に反対はするものの建設的な政策提言がない。

内閣改造したばかりに再び政治とカネの問題が表面化し、国民には嫌気が差すが、それでも選ばなければならない。選びたくなくても選ばなければない選挙といえる。先生方を当てにしないで努力して自活するしかないと覚悟を決め、選ぶとするか!とはいっても税や社会保障、外交、原発、などすべてにおいて大なり小なり政治の影響は庶民生活に密接に関わる。選挙ができない国もあるのに、自由に立候補が出来、自分の意思で託する人を選べるということはとても貫いこと。今回の選挙の後は、四年後になる可能性が大。とにかく選ばなければならないのだから、選んで、その後をしっかり見つめよう。

人は意味があるから生かされている。今年も多くの方々に支えられました。本当にありがとうございました。皆様にとって新年が良き年でありますように。
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